皆様、大変お待たせいたしました。
21日の夜遅くに戻って参りました。
出張中は、宿泊先のネット環境が今ひとつで、レスポンデント反応の話をする前にこちらのお話の展開だけでもチェックしようと思って見てみたのですが、文字化けしてしまって何も読み取ることができず、結局、今になってしまいました…。
では、レスポンデント反応についての説明を始めます。
※これまでお話してきたように、ここから先も行動分析学における行動の捉え方や行動分析学の目的を踏まえた上で話を進めます。
※それと、矢継ぎ早に打ち込んだので、誤字脱字等が散見されるかもしれませんが、校正しておりませんので、ご容赦ください。
まず、議論を醸している「定義」についてですが、ここは、私が教科書として愛用している本から引用いたします。
レスポンデント行動(反応):行動に先立つ環境変化によって誘発される行動。
オペラント行動(反応):行動の後の環境変化によってその生起頻度が変化する行動。
(小野浩一2009,行動の基礎,培風館,P47)
と、上記のようにされています。
しかし、これだけでは何のことだかよく分からないと思うので、もう少し詳しく説明します。
以前にお話した中にもあったように、行動分析学における行動の捉え方で研究を進めていくと、これら2種類の行動(反応)に分けることができ、実際、このように分類されている訳ですが、この両者の違いはズバリ「その形成過程」にあります。
どのように違うのか?
それは、
レスポンデント行動(反応):レスポンデント条件付けに基づく。
オペラント行動(反応):オペラント条件付けに基づく。
この2点に尽きます。
なので、このレスポンデント行動については、よく「反射的である」と表現されることが多く、実際にそのほとんどが、特定の刺激によってまさしく誘発される生得的な反応(学習しなくてもできる行動)であるので、ザックリと知っておくだけならそれでも構いませんが、厳密に知ろうとお考えであれば、この2つの条件付けの過程の違いを知ることが重要になります。
| あ6699 | 2011/04/23 12:32 PM |
では、それぞれの条件付けの過程について説明します。
順序が前後しますが、犬好きでしつけやドッグトレーニングに関心のある方たちであれば、どちらかというと馴染みのあるオペラント行動から説明しますね。→その方が理解しやすいかも知れないので…。
オペラント条件付け:
前述の通り“行動の後の環境変化によってその生起頻度が変化する行動。”なのですが、これをもう少し事例を交えて噛み砕きます。
[オペ事例]
このコメント欄のはるか上の方にあった(笑)、“他犬を見て吠える犬”を例にします。
他犬が出現する(前環境)→吠える(行動)→他犬が去っていく(後環境)
このような表記を随伴性ダイアグラムと言いますが、これはオペラント条件付けで用いられる表記方法で、これを見ていただくと一目瞭然かと思いますが、
「吠えるという行動の後の環境変化(他犬が出現→他犬が去っていく)によって、吠えるという行動の生起頻度(発生頻度)が上がる」という現象が起こっていますよね!?
これが、オペラント条件付けの一連の形成過程です。
一方のレスポンデント行動(反応)はというと、
レスポンデント条件付け:
これは既述の定義に照らして、その形成過程を文章化するよりも…手続きそのものを文章化した方が分かりやすいかと思います。
と!その前に、以下の言葉の定義を覚えておいてください。
・中性刺激(Neutral Stimulus以降NS):現時点では、対象となるものに何の行動(反応)ももたらさない刺激
・無条件刺激(Unconditioned Stimulus以降US):この刺激を提示すれば、対象となるものは何らかの行動(反応)をする刺激
・無条件反応(Unconditioned Response以降UR):無条件刺激(US)を提示した時に発生する行動(反応)
・条件刺激(Conditioned Stimulus以降CS):中性刺激(NS)と無条件刺激(US)の対提示(NSの次にUSを提示する作業のこと)を経た結果、中性刺激(NS)だけを提示した場合でも無条件反応(UR)を誘発するようになった刺激
・条件反応(Conditioned Response以降CR):条件刺激(CS)のみの提示で誘発されるようになった行動(反応)のことで、無条件反応(UR)と行動(反応)自体は、同じ場合が多々ある。
では、これらの定義を踏まえて、図式化しますと、このレスポンデント行動(反応)自体がまた2種類に分かれます。
【レスポンデント行動の種類】
1.USそのものが誘発するUR(生得性レスポンデント行動)
2.NSとUSとの対提示の結果、NSを提示するだけでも誘発されるようになった行動CR(学習性レスポンデント行動)
…これも、事例で噛み砕きましょう。
[レス事例1]
1.は、いわゆる反射といわれる部類のものです。
例えば、
梅干やレモンを口に含むと唾液が大量に分泌されますよね?あれなんかが、身近な事例で有効でしょう。
では、2.は、どういったことなのでしょうか?
これも、難しく考える必要はありません。
1.の結果、それを見るだけで唾液が分泌されるようになりますよね?
つまり、元々、梅干やレモンというものの味覚を知っていた訳ではないので、最初は、口に含むまで唾液を分泌するというレスポンデント行動(反応)は発現しません。が、一度でも口に含み、その味覚の学習が成立すると、次からは、梅干やレモンを見ただけで唾液が分泌されるようになる。
要は、学習の結果、そうなるということです。その対提示が例え1回だけであったとしても、学習が成立する場合は、多々あります。
少々強引な説明だったので、もう少し上の用語を取り入れて説明します。
対象者は、元々、梅干という食べ物を知らない人であることを前提としてください。
(1)対象者は梅干を知らない→梅干を提示→唾液は分泌されない(梅干はNSの状態)
(2)梅干を口に含む→唾液が分泌される(梅干が本来もっているUSとそれに対するUR)
(3)(次からは…)梅干を見る→唾液が分泌される(梅干はCSとなり唾液分泌はCRと呼ばれるようになる)
ということで、
梅干を知らなかった時点での梅干本体=NS
梅干を食べた時の酸っぱさ=US
梅干を食べた時の反応(唾液分泌)=UR
となり、だいたいの方がこのNSとUSは、1回の対提示で学習が成立し、次からは、梅干を見ただけで唾液を分泌するようになります。
こうなった場合、
梅干本体=CS
梅干を見ただけで唾液が分泌される反応=CR
という風に表現することができます
| あ6699 | 2011/04/23 12:35 PM |
[レス事例2]
学習性のレスポンデント行動(反応)については、もう一例…。パブロフの犬の実験はご存知でしょうか?メトロノームの音とフードとの対提示で唾液分泌を誘発するというものですが、これを事例としますね。
この場合、刺激と反応は、以下のようになります。
・中性刺激(NS):メトロノームの音
・無条件刺激(US):フード
・無条件反応(UR):唾液の分泌
この時、すでにフードと唾液分泌の間の関係は、USとURであることは、明白です。
そこにメトロノームのカチッカチッという音を対提示します。
※メトロノームの音がNSであることを説明する必要は無いと考えますが、大丈夫でしょうか?
要は、メトロノームが鳴り出すとフードがもらえるという対提示を行う訳です。そして、これを数回繰り返します。
すると、やがて、この犬は、メトロノームの音がするだけで唾液の分泌を始めたという実験です。
このように、まったく関係の無いもの(NS)をUSと対提示することでCS化する作業もレスポンデント条件付けとなり、そこで見られる行動(反応)はレスポンデント行動(反応)ということになります。
なので、クリッカーを使ったトレーニングは、まさしくレスポンデント条件付けをスタートにしてレスポンデント行動(反応)を誘発することを確立することから始まるトレーニングです。つまり、そこからコマンドと行動との関連性を付けていく作業はオペラント条件付けになりますので、間違えないようにしてください。
※というか、クリッカー自体を考案したのは、行動分析家ですから…ね。クリッカー使われる方は、せめて行動分析学の基礎知識を身に付けておかないと、マズくないですかね!?
その他にも、結構身近なところに、レスポンデント行動(反応)は存在してます。
例えば、
・それこそ、名前を呼んだら振り向く
・名前を呼んだら、戻ってくる
・レジ袋をガサゴソし始めるとどこからともなくやってくる
・他犬を見たら背中の毛が逆立つ
などなどです。
以上で、かなり簡単にではありますが、レスポンデント行動(反応)とオペラント行動(反応)を説明して参りました。行動分析学における行動の解釈としては、これ以上もこれ以下もありません。上記のような手続きを取る条件付けの違いで分類されるのがレスポンデント行動(反応)とオペラント行動(反応)であり、そう解釈することで「行動の変容」に役立ててきたということになります。
ご理解いただけましたでしょうか?